本間医師 新型コロナウイルスについて その3

新型コロナウイルスについてのウイルス学的な特徴

 

新型コロナウイルスは新しく登場したウイルスです。適切な対応をするためには正確な情報が必要になりますが、ウイルスを含め、感染症についての理解は、医師や専門家と一般の人の間に大きな違いがあります。

 

また、他のウイルスの特徴を今回の新型コロナウイルスを含め、すべてのウイルスがそうであるような考え方や表現もみられ、とても混乱しています。

 

今回の記事は、ウイルスとは何なのか?という基本的なことからを含め、新型コロナウイルスについてのウイルス学的な特徴や症状を、予防や治療を考える上で重要な点を中心にまとめました。

 

ウイルスとは、一言で説明すると遺伝子(体の構造や機能の設計図)を持ち、他の生物に感染するとても小さな構造体になります。

ウイルスは、生物の最小単位を遺伝子と考えると「生物」になりますが、細胞と考えると生物ではなく、遺伝子を持ち、感染し、増殖はするが「物質」ということになります。生物をどのように定義するかによって生物にも非生物にもなるという存在ですね。

 

非常にたくさんの種類があり、ヒトに感染して感染症を起こすウイルスもあれば他の生物(動物、植物、菌類など)に感染するものもあります。

 

細胞を持たないため、自己だけで増えることはできず、増えるためには必ず他の生物の細胞に感染する必要があります。

 

ほとんどの生物は遺伝子の情報を伝えるものとしてDNAを使っていますが、ウイルスはDNAの場合(DNAウイルスという)とRNAの場合(RNAウイルスという)があります。

 

RNAはDNAに比べ構造が不安定で壊れやすいという特徴がありますが、一方、遺伝子の変異が起こりやすく進化スピードがとても速いというメリットがあります。

 

ウイルスの基本構造は、遺伝子とそれを囲む固いタンパク質の殻からなるとても単純な構造で、細胞や細菌と比べるととても小さいものです。

 

さらに、遺伝子を含んだタンパク質の殻の外側に、感染した細胞由来の生体膜(脂質の膜)であるエンベロープを持つウイルスと持たないウイルスがあります。

 

一般的な大きさは、それぞれの直径がヒトの細胞で約10μm、細菌で約1μm、大きめのウイルスであるインフルエンザウイルスや今回解説するコロナウイルスで約0.1μm小さめのウイルスであるパルボウイルスでは約0.02μm程になります。

 

まずは今回の新型(COVID-19)も含めたコロナウイルスがエンベロープを持つRNAウイルスであるという点を抑えてください。これが予防や治療を考える上で重要なウイルス学的特徴になります。

 

他の生物に感染する病原体の代表にはウイルスの他に細菌があります(さらに細かく言えば真菌(カビの仲間)、マイコプラズマ、リケッチアという病原体もあり、それぞれ特徴が異なります)。細菌は単細胞生物で、一般にウイルスよりはかなり大型になります。最も重要な違いは、ほとんどの細菌には抗生剤が効きますがウイルスには効かないことになるでしょう。

 

コロナウイルスは、従来は風邪を引き起こす代表的なウイルスの一つと考えられてきました。つまり、とるに足らないウイルスというイメージです。

 

ところが、2000年以降、ヒトに重症な肺炎を起こすコロナウイルスがいくつか突然出現してきています。いままで重症肺炎を引き起こしたコロナウイルスを年代順に簡単に解説します。

 

SARSコロナウイルス(SARS-CoV) 
2002年に中国広東省で発生。総患者数は8,069人、うち775人が重症の肺炎で死亡しました(致命率9.6%)。死亡した人の多くは高齢者や、心臓病、糖尿病等の基礎疾患を前もってもっていた人です。子どもにはほとんど感染せず、感染しても軽いかぜ症状を示すのみでした。

 

MERSコロナウイルス(MERS-CoV)
2012年にサウジアラビアで発見。27カ国で2,494人の感染者がWHOへ報告され(2019年11/30日の時点)、そのうち858人が死亡しています(致命率34.4%)。致命率が高いですが、その後の調査で、多くの人に抗体の保有(つまり感染しているということ)が認められ、ほとんどが軽症か不顕性感染(症状がでないまま感染して治っている)であると考えられています。

 

これらに今回の新型コロナウイルス(COVID-19)を加えた3つのコロナウイルスは、風邪を引き起こす従来のコロナウイルス(αコロナウイルス)とは遺伝子的に系統が異なるコロナウイルス(βコロナウイルス)になります。

 

これらのウイルスが突然、どのようにして出現したかは良くわかっていません。動物由来のコロナウイルスがヒトに感染するように変化したという説が有力ですが、現代では、分子生物学(遺伝子工学)の知識があり、材料と施設、資金、時間があれば、これらのウイルスをつくることもできます。

 

また、これまでの日本で検出された新型コロナウイルスの遺伝子解析で、系統の違うウイルスが複数検出されていることにより、コロナウイルスがすでに何回も全く違う経路で日本に入って来たとする情報がみられます。
arxiv.org/abs/2002.08802

この可能性はもちろん否定できないのですが、そうであると結論づけるの少し早計だと思います。

 

例えば、これはインフルエンザウイルスでは、当たり前にみられる現象です。同じ年の同じ場所の流行でも、少し時期が異なれば違う型のウイルスが検出されるからです。

 

上にも書いた通り、RNAウイルスはとても変異が激しいウイルスで、1人の患者で大量に増殖する際には、もとのウイルスだけでなく、変異したたくさんの種類のウイルスの集合体になっていると考えられます。

 

簡単に言えば、1人の患者がもらったウイルスが、体内で増殖し、体外に出る(他の人に移す)時には、違う遺伝子配列に変異している可能性があるということになります。

 

コロナウイルスの主要な検査法である遺伝子を増幅するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)という検査法は、複数のウイルスが混じっている場合に、ウイルス量や起こしている症状などとは関係なく、増幅されやすい一つのものだけが優先的に増幅されるという特徴があります。

 

ごく一部の(遺伝子)検査や結果だけをたよりにした結論は推計が推計を呼んでいるだけの可能性がありますのでご注意ください。

詳しく調べたい方は下記などをご参照ください。


Parvin JD, Moscona A, Pan WT, Leider JM, Palese P: Measurement of the mutation rates of animal viruses: influenza A virus and poliovirus type 1. J Virol 59: 377- 383, 1986.
Drake JW: Rates of spontaneous mutation among RNA viruses. Proc Natl Acad Sci U S A 90: 4171-4175, 1993.
Mansky LM, Temin HM: Lower mutation rate of bovine leukemia virus relative to that of spleen necro- sis virus. J Virol 68: 494-499, 1994.

 

今後は、
・ 新型コロナウイルスについての対策
感染予防、感染が疑われる時、
・新型コロナウイルスの治療薬
などを記事にしていきます。

 

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2020.02.27 Thursday  
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